良心の囚人からの強制臓器収奪は、第二次世界大戦、ホロコーストでの強制収容所でナチス・ドイツが囚人に行ったことと比較できます。この問題に対して沈黙を破ること、この残虐な人権侵害を公然と非難することは極めて重要です…

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中国の象徴「パンダ」がヒトになったとき…

 

バーボラ・バルコヴァ

 

良心の囚人からの強制臓器収奪は、第二次世界大戦、ホロコーストでの強制収容所でナチス・ドイツが囚人に行ったことと比較できます。この問題に対して沈黙を破ること、この残虐な人権侵害を公然と非難することは極めて重要です。世界のほとんどの国が友好な外交・経済関係を保とうとする一国家が行っていることなのです。芸術とはコミュニケーションの普遍的な道具です。私は自分の好む手段として、空間を利用するインスタレーションを通して、この問題に対する良知を広げていくことを選びました。一つひとつのパンダに矛盾した隠喩が込められています。中国が過剰に保護するパンダが、共産党政権下で濫用され価値のないものとして扱われている人間になったのです。

 

中国国家の自国民の扱いと、中国国家(そして世界自然保護基金)の象徴であるパンダの扱いは、実に対照的です。「良心の囚人」が不当に扱われているように、パンダの体も漢方の処方に使われる部位が濫用されています。パンダの部位は密漁され闇市場で売買されますが、人の臓器は中国共産党の公的な承認のもとで売買されています。

 

野生のジャイアント・パンダの保護は正しい行いですが、私のプロジェクトでは、動物と人間の生命の価値へのアプローチの違いを人々に認識してもらおうとするものです。ジャイアント・パンダの保護と人命の保護の間に横たわる矛盾、パンダにも中国の囚人にも生きる権利があり自分の臓器を所有する権利があることが、パンダの縫いぐるみに込められています。また、クマのぬいぐるみといえば、幼い頃から抱きしめて可愛がってきた友という文化的な観念がありますが、ここに見られるぬいぐるみは色素斑のあるリアルな人工肌を用いて髪の毛で縫い込まれています。乳首、へそ、臓器売買の犠牲者と同じ位置にある手術の縫い目があります。色と体はパンダですが、サイズと重さは新生児と同じです。このような形で脆弱性を強調し、その命を慈しみ保護する必要性を訴えようとするものです。

 

http://barborabalkova.cz/pandy.html

 

 

バーボラ・バルコヴァ(1978年生まれ)

 

チェコ共和国の現代アートをリードする芸術家。

 

視覚アート、視覚コミュニケーション、新しい芸術媒体、アート・セラピーを学ぶ。2006年ウィーン美術アカデミー卒。絵画、写真、彫刻、インスタレーションで、伝統手法と新しい媒体を融合させる。人間の尊厳、生きていく上でのその変動と体験がバーボラの作品の核心にある。個人・集団の記憶を通じて見た近年の社会・政治問題一般も取り上げる献身的なアーティスト。ヨーロッパでは20回以上の個展、50回以上のグループ展を開催。ニュー・メディア賞、リフレックス・マガジン賞などの芸術賞を受賞。作品は公共・民間のコレクションに収められている。

http://www.barborabalkova.cz

 

これまでのチェコ共和国でのパンダ展

2016年2月〜8月       “The Far Side of Heaven”
                                                     Marianskaギャラリー

2016年12月〜2017年1月      プラハの Art in Box ギャラリー

2017年10月〜2018年3月  ”Nightmare of the Great Panda”
                GASK ミュージアム

 

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当時のチェコ文化大臣ダニエル・ハーマン氏(左から二番目)
と人権弁護士デービッド・マタス氏(右端)と一緒に
(2017年7月10日 チェコ文化省にて)

 

中国では統計を発表しないため、組織化された臓器収奪の犠牲者数を実証することは困難です。アメリカの調査ジャーナリスト、イーサン・ガットマン氏は、数年にわたる研究の結果、約65000人がこのように殺害されていると推定しました。臓器収奪は今も行われており、増加傾向にあります。このため、私のインスタレーションには最低65体のパンダがあります。一体が残虐な臓器収奪の犠牲者1000名を象徴しています。

展示例