臓器移植をめぐる倫理 台湾の黄医師、日本の国会議員と意見交換

 11月中旬、台湾から来日した移植をめぐる倫理問題に取り組む黄千峯医師と、複数の日本の国会議員との意見交換が行われました。会合では、中国における強制臓器移植の実態と、それに対する各国の法整備状況について、詳細な情報共有がなされました。

 黄医師は、台湾衛生部(厚労省)苗栗病院精神科部長を務める傍ら、「台湾国際臓器移植ケア協会(TAICOT)」の理事兼副会長も担い、臓器収奪問題に取り組んでいます。TAICOTは弊会と協力関係にあります。

 日本での会合では、黄医師は国際医学誌のデータに基づき、台湾から毎年100-200人が中国で臓器移植を受けている現状を報告しました。

 中国では年間1万件以上の移植手術が行われており、その9割以上を死刑囚の臓器と公表していますが、実際の死刑囚数(年間1000-2000人)との著しい数の不一致が指摘されています。この差は、法輪功学習者やウイグル人、地下教会信者などの良心の囚人からの臓器収奪によって埋められている可能性が高いと話されました。

 日本政府や国会議員の対応

 日本の対応について、議員からは様々な提案がありました。

 鈴木英敬衆議院議員はG7としてのリーダーシップを取る必要性を指摘し、勉強会の開始を提案されました。また、山田宏参議院議員はこの問題をめぐる国際会議の開催について、台湾・米国・日本の三カ国の議員に民間団体を加えた形での開催が効果的との意見を述べられました。

 日本政府の態度も明確になりつつあります。池下卓衆議院議員事務所からは、昨年開催された国際会議「アジア太平洋議員フォーラム(APPF)」において、臓器取引や移植ツーリズムの不正防止問題について日本側が提起し、採択されたことが紹介されました。

 昨年日本でも無許可の移植斡旋業者が逮捕される事案が発生しており、法整備の必要性が高まっています。現在、日本では年間約数百名が臓器移植を受けていますが、ドナー不足により海外渡航移植のリスクが存在します。

 臓器終末を巡り、各国では法整備が進みます。台湾では2015年に最初の規制法を制定しました。近年では、患者が中国での移植に渡航することを防ぐための法律を制定し、すでに6つの市議会で可決されています。

 このほか、英国では2022年に臓器収奪に関連する改正保健医療法を制定し、カナダでも2023年に同様の法律が成立しました。米国では2024年、法輪功保護法案が下院で可決されており、これは単なる臓器収奪防止にとどまらず、中国による組織的な信仰弾圧への対策として位置づけられています。

 今回の日本の国会議員との意見交換を踏まえ、SMGネットワークは今後の取り組みとして、来年4月に日本において国際会議の開催を準備いたします。詳細は決まり次第、周知のご連絡をさせていただきます。


黄千峯

台湾衛生部(厚労省)苗栗病院精神科部長。国立台湾大学公衆衛生大学院で疫学・予防医学研究院博士課程を修了。米国ジョンズ・ホプキンス大学公共衛生修士課程を修了。台湾においてTAICOTを通じて不正な臓器取引を防止する活動を続けている。