厚生労働省は、海外で臓器移植を受ける「渡航移植」について、法律上および医療・倫理上の観点から注意を促す情報を公表した。同省は、移植を検討する場合は必ず国内の移植実施施設に相談するよう呼びかけている。
イスタンブール宣言に基づく国内移植の原則
臓器移植の国際的な原則を定めた「臓器取引と移植ツーリズムに関するイスタンブール宣言」では、各国が自国内の提供者による移植医療の実施に努めるべきことが示されている。臓器売買や移植ツーリズムの防止を目的として、多くの国がこの宣言に賛同しており、日本もその趣旨に賛同し、臓器移植法の運用指針に明記した上で、国内の移植体制整備に取り組んでいる。
医療・倫理の両面に懸念
厚労省は渡航移植について、医療上と倫理上の双方に懸念があると指摘する。医療面では、治療内容や術後経過が国内医療機関に十分共有されず、帰国後の継続治療が難しくなる場合があるほか、術後感染症などのリスクや、渡航先の衛生管理・医師の技術水準への不安が挙げられる。
倫理面では、臓器売買や無許可のあっせんが臓器移植法で禁じられ違反すれば刑罰の対象となること、提供者の人権が十分に守られない可能性、現地で移植を待つ患者の機会に影響を及ぼしかねないことが問題視されている。国内の複数医療機関では、こうした懸念を踏まえ、違法性が疑われる渡航移植後のフォローアップ診療を原則断る方針を示しているという。
相談は必ず正規の窓口へ
臓器のあっせん業は、臓器移植法第12条に基づき厚生労働大臣の許可を受けた団体に限られており、日本臓器移植ネットワークなどが該当する。移植を希望する場合は、学会等の認定を受けた移植実施施設の専門医に相談することが求められる。
中国をめぐっては、法輪功学習者らを標的とした強制的な臓器収奪の実態が国際的に指摘されており、渡航移植を通じて日本国民がこうした人権侵害に関与してしまう危険性も懸念されている。厚労省の今回の呼びかけは、国内の移植体制を守るとともに、渡航移植に伴うリスクへの認識を広く国民に促すものといえる。


