【特別記事】米上院、強制臓器摘出に制裁を科す法案を可決 「法輪功および強制臓器摘出被害者保護法案」が下院へ

米連邦議会議事堂ロタンダの天井画「ワシントンの神格化」

米国連邦議会上院は2026年9月28日、中国における強制的な臓器摘出に関与した者に制裁を科す「法輪功および強制臓器摘出被害者保護法案」(S.4009)を、全会一致の同意(ユナニマス・コンセント)により可決しました。法案は下院に送付されており、下院の可決と大統領の署名を経れば、強制臓器摘出そのものを正面から対象とする初の米国法が成立します。

提出者は、いずれも上院外交委員会に所属するテッド・クルーズ議員(共和党・テキサス州)とジェフ・マークリー議員(民主党・オレゴン州)です。共同提出者には与野党の上院議員10名が名を連ね、超党派で計12名が支持しました。

これまでと何が違うのか

1 「決議」から「法律」へ

これまで米議会で積み重ねられてきたのは、非難や調査を求める決議、あるいは下院単独での可決にとどまっていました。下院では2025年5月5日に「法輪功保護法案」(H.R.1540)が発声投票で可決されましたが、上院に送られた後は外交委員会で審議されないままとなっていました。

今回のS.4009は、上院が強制臓器摘出をめぐって可決した初めての、拘束力のある法案です。象徴的な意思表示から、政府に義務を課す段階へと移ったことになります。

2 制裁は「できる」ではなく「しなければならない」

法案は、大統領に対して制裁の発動を義務付けています。中国における強制臓器摘出に「意図的かつ直接的に関与し、または助長した」と判断される外国人の名簿を、施行後180日以内に議会へ提出し、名簿に掲載された者について、米国内の資産を凍結し、入国を認めず、査証(ビザ)の発給を禁じ、すでに発給された査証も即時に取り消すと定めています。名簿は新たな情報が得られるたびに更新され、その後も毎年の更新が求められます。

違反した場合の罰則は、国際緊急経済権限法の規定が準用されます。

3 米政府自身に「公式認定」を迫る

法案は、中国政府が組織的な強制臓器摘出を行っているか、または過去に行っていたかについて、国務省が施行後1年以内に公式の判断を示すよう義務付けました。法案の「認定事項」には、「米国政府は、情報機関を含め、中国政府による組織的な臓器摘出の疑いについて、いまだ公式の評価を示していない」と明記されています。

報告書に盛り込むべき事項として、中国国内で行われている年間の移植件数、自発的な提供者の数、移植用臓器の入手源の評価に加え、「臓器の調達に要する日数が、把握されている提供者数から見て実際に可能といえるか」の評価が挙げられています。短期間で臓器が用意される実態そのものを、数字の整合性から検証させる内容です。

さらに、組織的な強制臓器摘出があったと認定された場合には、それが「残虐行為(atrocity)」に当たるかどうかの判断も求めています。

4 自国の関与も点検の対象とする

施行前の10年間に、中国における臓器移植の研究、または中国の機関と米国の機関との共同研究を支援した米政府の助成金の一覧を提出することも定められました。他国を批判するだけでなく、自国の研究資金が、実態の検証されていない移植医療を支えてこなかったかを洗い出す規定です。

5 対象は法輪功学習者だけではない

法案は「強制臓器摘出」を、強要、拉致、欺罔、詐欺、権力の濫用、または弱い立場の利用によって臓器を摘出する行為と定義しています。法輪功学習者を名指ししつつ、ウイグル人をはじめとする他の良心の囚人も射程に入る定義です。国務省の報告でも、良心の囚人全般を対象に政策と実態を整理するよう求めています。

一方で、農産物・食料・医薬品の取引、人道支援に関わる取引、および物品の輸入は制裁の対象から除外されました。国家安全保障上の理由による個別の適用免除と、5年の期限(サンセット)条項も置かれています。

担当議員の言葉

「中国共産党は、残忍で国家ぐるみの臓器摘出産業を通じて、法輪功学習者を標的にし続けている。これらの残虐行為は、信教の自由と基本的人権に対する攻撃である。マークリー議員とともに、この超党派の法案を上院で通すことができたことを誇りに思う。下院の同僚諸氏には、これを可決し、大統領の机に送るよう強く求める」

テッド・クルーズ上院議員(共和党・テキサス州)

「中国による弾圧と人権侵害は、今もなお恐るべき結果をもたらし続けている。中国全土の弱い立場に置かれた人々からの強制臓器摘出の報告も、その一つである。私たちは、これらの犯罪の被害者のために立ち上がらなければならない。この超党派の取り組みは、中国政府にその侵害の責任を負わせるものだ」

ジェフ・マークリー上院議員(民主党・オレゴン州)

共同提出者の一人であるジェームズ・ランクフォード議員(共和党・オクラホマ州)は、良心の囚人から臓器を奪う行為を「悪」と表現し、米国ははっきりとこれは誤りであると述べるべきだと語っています。

残る手続き

法案は下院に送られました。下院が修正なく可決すれば、大統領へ送付されます。第119議会の会期内に下院が議決しなければ法案は廃案となり、審議は一から出直しとなります。米国の人権団体からは、「遅れの一日一日が、罪のない命を失わせる」として、下院の早期可決を求める声が上がっています。

日本にとっての意味

日本には現在、臓器の出どころを検証できない国への渡航移植を規制する法律がありません。渡航移植の仲介や、帰国後の国内での継続医療についても、法的な歯止めは置かれていないのが実情です。

米国が制裁と公式認定にまで踏み込んだことで、主要国のなかでの日本の対応の遅れが、いっそう際立つことになります。SMGネットワークは、臓器の出どころが検証できない国への渡航移植の規制を含む法整備を求め、国会議員および地方議員への働きかけ、医療関係者への啓発、国際ポスターコンクール受賞作品展の開催などの活動を、引き続き進めてまいります。

出典

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