中国の臓器移植はどの程度までが闇市場であり、どの程度まで中国共産党と中国政府が駆動しているのでしょうか? 今日はこの疑問を中心に取り上げたいと思います。  …『最新報告書』に、中国で臓器のために無実の人々が大量に殺害されていることは国家/党が駆動 しているといういくつかの証拠があることだけでもお伝えできればと思います。中国で臓器のために無実の者が大量に殺害されていることは、国家/党が先導する者であることを示す9つの点を指摘していきます。

デービッド・マタス氏のスピーチ

 

中国国家/中国共産党による移植という名の殺害メカニズム
(2018年1月 日本でのイベント用のスピーチ)

デービッド・マタス

 

デービッド・キルガー氏、イーサン・ガットマン氏、私の三人は、中国における臓器移植濫用に関する『2016年 最新報告書』で、中国政府発表の公式数字をはるかに上回る大規模な件数の臓器移植手術が行われていることを主要点として指摘しました。個々の移植病院の移植件数を一軒一軒あたり、データの指標を一つ一つ検証することで、各病院の総計を照合し、多大な移植件数は裏付けされました。この多大な移植件数から多くの疑問が生み出されます。その一つは「臓器はどこから来るのか?」というものです。(『2016年 最新報告書』の2点目でもありますが)そのほとんどは良心の囚人のものであり、さらに良心の囚人のほとんどは精神修養の法輪功の学習者のものであるというのが我々の回答です。

大量の移植件数と良心の囚人が犠牲となっているという2点は、さらに別の疑問を生み出します。「中国国家/中国共産党がどの程度共犯であるのか?」というものです。中国の臓器移植はどの程度までが闇市場であり、どの程度まで中国共産党と中国政府が駆動しているものなのでしょうか?

今日はこの疑問を中心に取り上げたいと思います。『最新報告書』では、中国での良心の囚人からの大量の移植件数は闇市場産業ではないと明示しています。無実の人々の臓器のための大量虐殺の背後には、国家と党による働きかけがあるのです。

『2016年 最新報告書』の他の内容と同様に、大量の証拠がこの事実を裏付けています。この事実をいぶかしがる方は、『最新報告書』を読まれることをお勧めします。今日与えられたわずかな時間内では、この点だけでも十分にご説明することはできません。『最新報告書』では、中国で臓器のために無実の人々が大量に殺害されていることは国家/党が駆動するものだといういくつかの証拠があることだけでもお伝えできればと思います。中国で臓器のために無実の者が大量に殺害されていることは、国家/党が先導する者であることを示す9つの点を指摘していきます。

 

1) 資金面での動機付け
2) 軍の関わり
3) 国家の五カ年計画
4) 国家によるプログラムやプロジェクト
5) 党幹部の関わり
6) 臓器移植の産業化
7) 臓器移植の普及 
8) 王立軍による人体実験 
9) 王立軍が取得した実用新型特許


1) 資金面での動機付け

国家/党が中国の保険制度を無実の人々の殺害へと促した方法の一つに、保健部門からの国家資金撤退があります。国家資金がなくなってしまったら、保健部門は他の資金源を探さなければなりません。職員への給与が支払えなくなることを意味します。この分野で生計を立てるために別の資金源を探す必要があったのです。

国家/党は一つの資金源を閉じて別の資金源を開きました。国家/党は大量の良心の囚人を任意に無期限で拘束することで、底を尽きない移植のための臓器源を提供したのです。
国家資金の削減にあたり、病院、職員は、専門分野で生活していくために、国家が拘束する良心の囚人からの豊富な臓器供給源を活用して、巨大な移植産業に従事することを余儀なくされました。財政上、他の選択肢はなかったのです。

良心の囚人からの臓器のための大量殺害へと繋がった、国家資金の病院部門からの撤退は、社会主義から資本主義への経済転換の一環として行われたことです。転換前は、すべての病院は政府所有下にあり資金が賄われ経営されていました。医者はすべて国家職員でした。資本主義への転換にあたり、この国家の保健制度は崩壊しました。1978年から1999年にかけて、北京政府の保健制度への支出は32%から15%に削減。1990年から2002年の間には各地の公的保健収益で国家による公的資金が占める割合は60%近くから42%へと減少しました。このため、ほとんどの保健施設は民営化され、支出を賄うための事業収入に依存せざるをえなくなりました。

デービッド・ブルメンタルとウィリアム・シャオは次のように述べています。

 「公的な病院は営利を目的とするようになり、収支を重視するようになった」

心臓血管医のフ・ウェイミンによると、国家資金は職員の一ヶ月の給与さえ賄えませんでした。次のように語っています。

 「現状では病院は存続のために利益を追求しなくてはならない」

 ヒューマン・ライツ・イン・チャイナは下記のように報告しています。

 「地方の病院は十分な収益を上げる方法を編み出す必要がありました」

政府は資金拠出を撤回しただけでなく、基本的な衛生業務に対して価格管理を導入しました。しかし、この価格管理は包括的でなく、新たな技術や薬剤は管轄外でした。さらに医師の給与には病院の収益に基づいたボーナスの要素が含まれるようになりました。

ブルメンタルとシャオは次のように述べています。

 「この結果、高額な薬剤とハイテク業務の販売が爆発的に上昇した」

これらの変化が病院を移植医療へと走らせました。価格管理の適用しない全く新しい技術であり、私的収益をもたらし、術後は免疫抑制剤を必要とするのです。中国の病院にとって移植手術は収益をもたらす主だった方法となりました。中国では移植手術費のガイドラインはなく、数万元から数十万元にわたり、薬剤、手術費、臓器の調達、保存・輸送費などが含まれます。

2006年にデービッド・キルガー氏と私が臓器収奪に関して報告書を発表する前は、中国医科大学第一付属病院内の国際移植ネットワーク支援センターのウェブサイトに、国外の患者に対する移植手術費がリストされていました。腎臓移植費は6万ドル以上、肝臓移植費は10万ドル、肺・心臓はそれぞれ15万ドルでした。

北京武装警官総病院の臓器移植センターのウェブサイトには下記のような大胆な記述がありました。

 「私ども臓器移植センターは収益をあげている主要部門です。2003年の総収入は16,070,000元でした。2004年の1月から6月にかけての収入高は13,570,000元でした。今年(2004年)は30,000,000元を上回る可能性があります」

2015年3月のWorld Journalによる報告では、中国政府で保健を担当する幹部の黄潔夫の言葉として、肝移植費は最低60万元(約9万6千ドル)、腎移植費は30万元(約4万8千ドル)と引用されています。2006年、黄潔夫は『財経』誌で下記のように語っています。

 「臓器移植は病院が収益をあげる手段として用いられる傾向にあります」

 


2) 軍の関わり 

移植殺害産業に国家/党の関与を指摘する二つ目の要因に、軍の関わりがあります。鄧小平の時代以来、軍部が起業的な計画を通して資金調達する許容度がかなり高まりました。軍病院も例外ではありません。

人民解放軍総後勤部は解放軍の一部隊ですが、拘束されている囚人から臓器を調達して割当てる役を担います。この物流の担当部は臓器を病院に販売します。主に軍病院ですが、民間の病院にも販売しています。

臓器を軍病院に提供する制度は軍の費用で賄われています。しかし、移植手術から得られる利潤は軍には還元されません。臓器輸送が軍病院にとって私服を肥やす方法となりました。

瀋陽軍区総後勤部の上級軍医が2006年3月31日の大紀元で次のように書いていました。

 「中国は国際的な生体臓器売買の中心であり、2000年以来、世界の生体臓器移植の総計の85%以上がここから来ています。中央軍事委員会のデータ報告によりますと、この分野での「功績」が認められ将帥に昇格した者もいます」

また、次のようにも述べています。

 「軍は、臓器移植の管理制度の役を果たします。この種の管理と組織化された中核部分は軍制度に所属します。地方政府と匹敵するものではありません。軍の機密となれば、誰も情報を得ることができなくなるからです。軍制度がどのように作動しているかは皆理解しています。大量の生体臓器源があり、多くの軍病院は移植手術に関して、自己の病院を監視する機関に報告していますが、並行してプライベートの臓器移植も大量に行なっています。このため、公式の数値よりはるかに高い数の移植手術が行われています」

 


3) 国家の五カ年計画

移植殺害産業が国家/党の指示によることを示す三つ目の要素に五カ年計画が挙げられます。中国の五カ年計画は社会的・経済的開発のイニシャティブを設定するものです。中国共産党中央委員会の本会議と全国人民代表大会で形づくられます。

1953年に始まり、これまで12の五カ年計画が設けられました。法輪功の迫害運動の到来以来、臓器移植は五カ年計画に継続的に組み込まれて来ました。

2001年の第10回五カ年計画では、臓器移植に関する規定の確立が衛生部の計画の一部となりました。同計画の期間にあたる2004年には、臓器移植が健康・科学・技術の開発において、主要な研究分野・重要分野として位置づけられました。

2008年の第11回五カ年計画では、国家科学技術支援計画の主要な研究課題に加えられています。2011年の第12回五カ年計画では、臓器移植は国家科学技術支援計画の項目として引き続き残り、いくつかの他の特別計画にも盛り込まれました。

 


4) 国家によるプログラムやプロジェクト

4点目として、2000年以来、中国国家が移植産業の発展に直接関わるいくつか特定のプログラム、プロジェクト、計画、資金を設けてきたことが挙げられます。国家の書類では、臓器移植は「未来産業を司る包括的な技術」の一つと記述されています。これは中国が世界的な移植開発に乗り出していることを示します。

軍および民間の中央および地方政府は、臓器移植の研究開発・産業化の促進のため、医療機関にかなりの投資をしてきました。『最新報告書』では、特定の例を数多く挙げています。中国政府/党が臓器移植を優先させたことを反映するものです。これらの特定のプログラム、プロジェクト、計画、資金を見ることで、いかに中国政府/党が移植開発を刺激し、移植手術の発展を駆動してきたかが理解できます。

 


5) 党幹部の関わり

5点目は、共産党/国家のあらゆるレベルの幹部が、直接、移植の開発と支援に関わっていることです。発展の妨げとなる障害を取り除く助けをし、財務面での援助を手配し、臓器移植センター間で協力関係が築かれるよう仲介役を果たしてきました。『最新報告書』ではいくつかの具体例を挙げています。

 


6) 臓器移植の産業化

中国国家・共産党によるこれらの努力の成果は、中国全域での臓器移植の産業化という形で目にすることができます。この産業化は、中国国家・共産党の関与の結果であり、この事実を示す証拠でもあります。

1960年3月、中国で最初の腎移植が行われました。1970年代には、腎移植の実験が全国的に拡張されました。1990年までには、年間1000件以上の腎移植が行われるようになりました。1990年末までには約80軒の腎移植用の施設が全国的に開設されましたが、各施設での手術件数は年間20件未満でした。

浙江大学医学院の移植医、鄭 樹森は、2006年3月に肝移植が経た発展の3段階を記しています。「第一段階は1970年代で実験・臨床探査で動物実験も含まれる。第二段階は1980年代で、進展は停滞し、移植件数も減少。第三段階は1990年代以降、安定した進歩が見られ、大飛躍へと累増した」。この発展過程は具体的な肝移植件数と伴に解説されています。

2000年以来、民間・軍による移植研究センターが大量に設立し、新たな移植技術が孵化され、移植産業の急速な発展へと結びつきました。40年近くの準備を経て、法輪功を大量に拘束することから可能になった良心の囚人からの底を尽きない臓器源の到来とともに、中国での移植手術は、散発的な件数から現在の大規模産業へと、実に稀なる爆発的成長を遂げたのです。

『最新報告書』には、この産業化を具体的に示すケーススタディーが掲載されています。詳細を語るには時間がありませんが、こちらで取り上げた内容の例として是非お読みください。

 


7) 臓器移植の普及

中国で無実の者が大量殺害されていることに党/国家が関わっていることの結果であり、この事実を示す証拠でもあるもう一つの点は、中国全域における臓器移植の普及です。中国衛生部は、これらの医療機関を高い技術力で支援し、移植のための技術トレーニングを確立し、新しい移植技術を促進するために、多数の臓器移植センターで臨床での技術伝授・実践するよう指導していきました。

中国国内の移植産業の急成長に見合うため、多数の移植医が短期間で養成されました。この点に関しても『最新報告書』に具体例が豊富に挙げられています。

 


8) 王立軍による人体実験

王立軍といえば、2012年2月、成都市にある米領事館に亡命未遂したことで知られていることでしょう。この亡命未遂が、彼の上司である薄熙来の失墜につながりました。薄熙来は中国の国家主席・共産党中央委員会総書記の胡錦濤の座を競合する人物でした。2003年から2008年にかけて、王立軍は事実上、臓器移植のための生体実験を、数千件行っています。

2003年、当時遼寧省を司っていた薄熙来により、錦州市公安局局長に赴任した王立軍は、「錦州市公安局現場心理研究センター」を錦州市公安局内に設立します。同センターで行った研究で王は2006年9月に賞を授かっています。

受賞にあたり、彼は次のように語っています。

 「この分野における我々の科学・技術面での功績は、数千に及ぶ臨床での集中的な実験と多くの(同センターの)人々の努力の賜物です。何年も警察に勤めた者にとって、誰かが処刑され、その数分の内に変容していくこと、1人の人間が数名の人々の体内で延命することを見ることは、魂が掻き立てられます。由々しい事業です」

授賞にあたった光華科技基金会の任晋陽総書記は下記のように語っています。

「王立軍教授と研究センターは、致死的な注射をした後で摘出された移植用の臓器をレシピエントの体が拒絶する問題を解決するための基礎研究と臨床実験を行いました。彼らは全く新しい保護溶液を研究開発しました。肝臓と腎臓に生体内及び試験管内でも灌流処置を施すために利用されています。動物実験、試験管内実験、臨床での応用を通して、ステップバイステップの科学的成功を遂げ、レシピエントが拒絶しない臓器を可能としたのです」

2005年6月、『遼沈晩報』は「処刑された囚人における致死的注射の全行程」と題する王立軍の研究に関する記事を掲載しました。王立軍の研究の紹介として下記の文が与えられたという研究者の言葉が報道されていました。

 「致死的注射を通して囚人が死ぬ全ての工程を通して、注射の前と後の健康体の生存兆候が測定されます。様々な臓器に残留する毒素の量、死に直面するときの囚人の心理的変化…データは致死的注射による死亡後の臓器移植及びヒトの臓器移植の他の側面に重要な助けとなります。中国国内でも国外でも、これは最先端の研究です」

中国商務部のウェブサイトによると、「錦州市公安局現場心理研究センター」は10以上の大学と医療機関と共に研究を進めています。共同研究、学術交流では10カ国以上の大学と協力しており、米国、日本、イタリア、ノルウェー、スウェーデンが含まれています。

 


9) 王立軍が取得した実用新型特許

警官であった王立軍は、多産な発明家でした。発明の一つに、強制的な臓器提供のための殺害機器があります。

2014年8月の『北京青年報』によると、王立軍は254件の特許を取得しています。その内221件は2011年の申請で、平均すると1.7日に1件の申請率となります。この記事は「原発性脳幹損傷衝撃機」と呼ばれる製品についても言及しています。

中国の特許検索システムから、申請番号201120542042Xで検索できます。発明人は王立軍と大坪医院の野戦外科研究所第四室の研究員です。特許には下記の利点があると記載されています。

 「簡単な構造で、制作もしやすく、運用の推進を意図して作られている」

発明人の研究論文では、研究目的を下記のように記しています。

 「側頭部衝撃による外傷性の脳損傷のシミュレーション解析を確立し…側頭部衝撃による脳損傷のバイオメカニクスを討議し…」

同論文は異なるレベルでの脳への損傷を研究したもので、論文には言及されてはいませんが、最適な殺害方法を決定する上で有益な情報です。こめかみに適切に与えられた衝撃は、脳幹損傷、意識の喪失、さらには脳死につながる可能性があります。心臓は鼓動しており、様々な臓器や人体組織は生き続けるのです。

臓器摘出前に臓器源を固定する上で、この発明は注射の代替として効果的です。この機器による頭部への衝撃は、臓器の機能を維持するため、拒絶反応を低下させられます。

 

結論

臓器のための良心の囚人の殺害を国家/党が先導していることを示すものは多方面にわたります。このように短いスピーチでは、『最新報告書』の内容の表面に触れることしかできません。中国での臓器のための良心の囚人の大量虐殺が、日和見主義的な欲から行われたことではなく、熟慮され、計画され、組織化された意図的な国家/党による犯罪であるという結論に達した理由を、この概説から少なくとも感じていただけたことを願います。