3月4日午後、東京有楽町の交通会館会議室にて、中国専門アナリスト、イーサン・ガットマン氏の講演会が開催されました。主催は三省堂書店。通訳を交え、約1時間の講演会でした。 まずガットマン氏は、参加者並びにこの講演会の主催者、通訳の方々に御礼を述べた後、今日お話しする中国による臓器収奪は、過去の問題ではなく、現在進行形の問題であることをまず認識してほしいと述べました。そして、この問題の解決のためには何よりも粘り強く取り組むことが重要であること、中国の臓器収奪は、まずは法輪功に始まり、チベット、ウィグル、カザフなどのトルコ系民族に移行しているが、根本的な中国の国家犯罪としてのシステムは全く変わっていないと述べました。・・・


【2023/3/4~3/5】イーサン・ガットマン来日・講演会のご報告

 

 

東京交通会館内の会場にて、講演するイーサン・ガットマン氏

  

 

日本はもはや判断停止は許されない

三浦小太郎(評論家)

 

 3月4日、東京有楽町の交通会館会議室にて、中国の早期収奪問題を告発してきたアナリスト、イーサン・ガットマン氏の講演会が開催された。本稿はその内容に基づき、ガットマン氏の著作「臓器収奪 消える人々」(イーサン・ガットマン著 鶴田ゆかり訳 ワニ・プラス)の内容も加味してまとめたものである。

 ガットマン氏は1958年、シカゴにて心理学者の両親のもと生まれた。少年時代から父親とともに、インディアン保護地区や、ゴラン高原のアラブ人地区などのフィールドワークに参加している。一時、ケネディ暗殺事件にのめりこみ、暗殺現場まで一人調査に行ったこともあるという(結論はオズワルド単独犯行だった)。そして、心理学者の両親から学んだこととして、旧ソ連が反体制派を「精神病患者」として強制入院、社会から隔離していたことを教えられている。

 「私の両親は、他の心理学者と同様に、ロシアの反体制派が系統的に拷問を受けているという報告を懸念していた。1971年以降、世界精神医学会はソ連の精神医学会を常に非難していた。」(『早期収奪 消える人々』)

 西側が仮にソ連の精神病院を調査しようとしても、常に見せかけの施設だけしか検査することはできない。欧米の学術誌はソ連の精神医学者が研究成果を掲載することを拒絶し、学術交流も禁止された。当時のソ連は、反体制派の活動家を「緩慢な統合失調症」などと診断して幽閉していたからだ。たとえ権力の強制があったとはいえ、医師が非道徳的な行為を行うことは許されるべきではないのだ。ガットマン氏はこう述べている。「西ヨーロッパ、日本、アメリカ、オーストラリアはこの『ソ連ウイルス』を止めることはできなかったが『隔離』することはできた」(同)

 若き日から、独裁権力が科学、医学をいかに悪用するかを、ナチスの犯罪とともに教えられていたガットマン氏は、中国における法輪功から、現在はウイグル人をも対象にしていると考えられる「臓器収奪」についての調査を進めてきた。今回の講演会は短い時間でありながら、ガットマン氏のこれまでの活動の総括と、今後への問題提起について的確に述べたものとなった。

 

臓器収奪の経緯

 

 まずガットマン氏は、参加者並びにこの講演会の主催者、通訳の方々に御礼を述べた後、今日お話しする中国による臓器収奪は、過去の問題ではなく、現在進行形の問題であることを強調した。そして、この問題の解決のためには何よりも粘り強く訴え続け、証言、証拠を集めることが必要であることを述べた上で、中国の臓器収奪は、まずは法輪功に始まり、チベット、ウィグル、カザフなどのトルコ系民族に移行しているが、根本的な中国の国家犯罪としてのシステムは全く変わっていないと指摘した。さらに、中国が、何の罪もない人々から臓器を収奪し、それを産業化していること、この事実に対し、日本も決して中立的な立場をとることはできないことを今日は理解してほしいと訴えた。

 

 ガットマン氏は、まず、この臓器収奪を時系列に沿って解説した。

 1980年代後半から、中国では、主として死刑囚を対象に臓器収奪を行われてきた。そして、1994年、ウイグル自治区のウルムチにて、生体臓器収奪の最初の証言者が表れる。

さらに、1995年、直接死刑囚からの臓器収奪を行った医師、エンバー・トフティによる証言がなされた。銃で処刑された男性から、肝臓と腎臓を摘出することを命じられた(まだその男性には息があったが、麻酔も生命維持装置も必要ないとされた)

 

 その後、1997年のウイグルにおけるグルジャ事件(ウイグルの民俗伝統行事である若者の祭り、マシュラプが禁止され、抗議するウイグル人たちは弾圧された事件)における政治犯たちからも臓器収奪が行われたという証言が現れた。

 

 そして、1999年からは法輪功に対する大弾圧が開始され、2001年には、中国の労働改造所(政治犯収容所)に拘束された役200万人の法輪功修練者を対象に「小売りできる臓器」を絞り込むための医療検査が行われるようになった。これにより、2002年からは、海外からの移植ツーリズム患者の待機時間が、なんと2週間以下になったことが報告された。

 

 2003年には、拘束されたチベット人と、家庭教会(地下協会)の信者も同様に「移植のための医療検査」の対象となった。2007年には、中国の医療機関が、年間1万件の移植を行っていることが発表され、2012年には、最低でも年間6万件の移植手術が行われていることが、中国の個々の病院での移植件数から明らかである。

 2014年には、収容されている修練者だけではなく、法輪功修練者の自宅に警察が踏み込み、強引に臓器の組織適合性を調べるために血液やDNAサンプルを採集することが行われる。そして2016年には、中国政府は1000万人単位でウイグル人から強制的に、健康調査という名目で採決を行う。しかし、この際、漢民族は採決の対象になっていない。

 

 2017年以後、ウイグルで100万人以上の囚人を収容できる収容所が建設され、そこに収容されたウイグル人(カザフ人含む)は、2か月に一回の「健康診断」を受けるようになり、同年、ウイグルの複数の空港で、「臓器輸送優先通路」の張り紙が見られるようになる。そして2018年には、ウイグルで火葬場が建設され(ウイグル人はイスラムなので本来火葬は行わないはずだ)ます。最初の火葬場はウルムチに建設され、漢民族の護衛50名が配置されていた。


空港に設置された臓器輸送優先通路

 このような事実経過をガットマン氏は述べたのちに、ウイグルのアスク市における収容所を、撮影された衛星写真をもとにケーススタディとして解説した。

 まず、RFA(ラジオフリーアジア)のホジャ記者が得た証言によれば、アクスの二つの「再教育センター」とされている収容所には、1つには33000人、1つには16000人が収容されている。前者の収容所は、既に存在し、SARS感染の際に使用されたアクス感染病院の周辺に建てられている。また、収容所から約900メートルのところに火葬場が設置されている。

 

 

青丸が火葬場、左側右側が収容所施設、右側の収容所には病院がある

 

 ガットマン氏はかってアクス刑務所に一時期入所していたウイグル人(現在トルコ在住)へのインタビューで、以下のことを確認している。

 

1、アクス感染症病院は、もともとSARSウイルス感染の際に使われた病院であり、2013年、「過激なイスラム教徒」を「治療」するセンターとして開発された。

2、つまり、アクス感染病院は、中国が危険な人物だと判断したウイグル人たちの「再教育施設」となった。

3,アクス感染病院は、RFAの記者、ホジャ氏によれば、移植手術を行っている。

 

 また、この火葬場についても、ウイグル人は「火葬場から焼けた骨のにおいが漂ってきた。」「火葬場から強い毒物性の汚臭が発しており、住居者や作業員がよく苦情を言っていた」と述べている。

 ガットマン氏は、この火葬場には煙突が見当たらないが、おそらく極めて高度の熱を発する機械と、ろ過装置、そして肺炎を最低限にとどめる再燃焼設備が供えられ、多数の火葬がなされていたのではないかと説明した。

 

 そして、上海市付近の浙江省行政区にある浙江大学医学院付属第一病院では、ECMO(体外式膜型人工肺)のトレーニングセンターが置かれており、この機械を使いこなすことによって、移植可能な臓器の対外での保存時間をこれまでの2倍から3倍に延長することが可能となった。2017年の初め、肝臓移植が90%増加、腎臓移植が200%以上増加している。そして中国では2020年3月1日、コロナ患者への肺移植成功を大々的に宣伝している、これは、コロナ禍の中でも臓器収奪と移植が堂々と行われていたことのある意味証拠でもあるとガットマン氏は指摘した。

浙江大学医学院附属第一医院

 そして、ウイグル人の収取所証言者(収容所で囚人相手に中国語の授業をしていた)であるサイラグル・サウトバイ氏によれば、2〜3ヶ月に一度、収容所全体では身体検査が行われました。2日後に検査結果のリストがつくられた。そして3人の名前の横にピンクのチェックが付いていおり、彼らはそれから10日間の間にすべて消えていった。なぜ?とサイヤグルさんに尋ねたところ「臓器収奪よ」という答えが返ってきた。また、これも証言者のガルバハル氏によれば、血液検査の後、特定の囚人がピンク色の腕輪を手首につけていたのを覚えているという。

 

 また、ガットマン氏はカザフスタンでのウイグル難民からの聞き取り調査により、以下のことが分かったと述べた。

1,収容所を出るグループは二つに分けられる。一つのグループは若者で平均18歳。彼らは「再教育センター」と呼ばれた収容所から出た、いわゆる「卒業」後は、東部にある工場で労働者となり搾取されていく。

2,もう一つのグループは、25歳から35歳で、平均28歳。中国の医療機関が臓器として望む身体の発達段階にあるため、夜間にどこかに連れ去られていく。

毎年2.5%から5%が消えていく。様々な証言を総合すると、年間35000人ほどのウイグル人が収奪の犠牲となっているのではないかとガットマン氏は指摘した。

 

 最後にガットマン氏は、日本が今後どうすべきかを述べて講演を終えました。まず、カナダや米国は、すでに、中国への移植ツーリズムを法的に禁止している、そして今年4月コロラドで開催予定の国際移植学会にて、自分が臓器収奪の問題について25分ほど話す機会を与えてくれることになった、これは自分の人生の中で最も意義深い25分間になるだろうとガットマン氏は述べた。

 

 そして、これまで、中国と関係を深めることにとって、中国を改善しようとした西側の行動はすべて失敗に終わっている、今回のコロナにおいても、中国側が虚言を行ってきたことは明らかになった。中国における移植産業はウイルスと同じく、これを隔離・排除する必要があるとガットマン氏は強く訴えた。

 そして、今後、この臓器収奪の問題について「中立」や「どっちつかず」の態度はもはや終わった、日本は、中国側につくか、それに抗議する側につくかを今や選択しなければならない、私の講演や文筆活動がその選択の参考になればこれほど光栄なことはない、と講演を結びました。

 

 ここで、日本在住ウイグル人の参加者で、アクス出身のイスマイル氏が、自分の故郷で起きたことも全く今日の講演と同じで、周囲でどんどん行方不明の人が出てきた、また、収容所に入れられた人が中で死亡しても、その遺体を返してくれない、また、遺体の顔は見せてくれても、その体は見せようとしないという話を聞いていると述べました。ガットマン氏は、あなたの証言もぜひインタビューしたいとイスマイル氏に答えていた。

 

関連リンク:

 

【東京新聞】中国の臓器収奪ビジネスを告発 「知らなかったと曖昧な態度を取る時期は終わった」イーサン・ガットマンさん

https://www.tokyo-np.co.jp/article/239153

 

【大紀元】調査記者イーサン・ガットマン氏に聞く 臓器狩り問題、日本に期待される大きな役割

https://www.epochtimes.jp/2023/03/140604.html

 

【大紀元】調査記者イーサン・ガットマン氏は見た 法輪功迫害の初日、忘れられない光景

https://www.epochtimes.jp/2023/03/140618.html

 

【ETAC】イーサン・ガットマン サイン会でのスピーチ

http://jp.endtransplantabuse.org/archives/42732

 


 

ガットマン氏の言葉付記

「中国への渡航移植については不明な点が多いが、中国の医学文献には示唆するものがある。自慢話のように語られることもある。心臓や肺1つにつき、外国人は15万ドル(約1800万円)を支払うと見込まれることもある。富裕な日本人の中には、1つの臓器に100万ドル(約1億2000万円)以上支払った人もいるようだ。
我々の調査で浮上した病院の1つに中日友好医院がある。中国政府と日本政府が共同で設立した。同医院は日本政府から補助金を受けている。複数の国や地域の外国人や、中国共産党の中央委員会の幹部に医療提供をしており、臓器移植も含まれる。
ベッドは1600床、スタッフは500人以上。2015年には中国で最も競争力のある100の病院の中で43位にランクインしている。看護師は日本語を話し、病院のメニューには日本料理があるという。
つまり日本政府は、中国と日本とのあいだに特別な医療関係を築くために努力してきた。そして、具体的な結果をもたらした。コネのある日本人が臓器移植を必要としていれば、優先的に瀋陽の中国医科大学附属第一医院に入院できる。中日友好医院同様、中国医科大学附属第一医院も、日本語を話す中国人看護師を雇い、日本からの渡航移植者に対応している。」(ガットマン氏の著作より)

zokishudatsu
イーサン・ガットマン氏著作(臓器収奪・消える人々)

 

【AMAZON】臓器収奪――消える人々 – 中国の生体臓器ビジネスと大量殺人、その漆黒の闇 – (ワニプラス)
https://www.amazon.co.jp/dp/484707100X


3月4日 東京交通会館で講演動画

 
東京交通会館での講演の様子【看中国Youtube】
 

 

  ガットマン氏へのインタビュー動画

 
 

 


3月5日 イーサンガットマン氏を囲んでの勉強会の様子

 

勉強会の様子(参加者のプライバシーによりぼかしをいれています)

  3月5日、都内でこの問題に関心を持つ方々によるイーサンガットマン氏を囲んでの勉強会が行われました。

 参加者には、臓器移植に詳しい医者の方や、日本の臓器移植の歴史に詳しい元新聞記者の方、現役記者の方、十年以上中国に住んだ経験のある方、前衆議院議員の長尾たかし氏等、臓器収奪問題に関心を持つ多くの方々にお集まりいただき、活発な議論が交わされました。

 医者の方からの話によると、約100名近くの日本の学生が、中国の医大に行って臓器移植の勉強をしに行っているとのことでした。なんでも、日本で医大に入れなかった学生が、中国にいくのだそうです。・・・詳しい事実関係の調査が求められます。

 その他、日本人は、平和に慣れていて、こういった事実を見ても、信じようとしない、・・・どうやって、日本に広めればよいのか・・・等など

 イーサン氏は、こういった議論を聞いて、イギリス、アメリカ、台湾、EUなどの状況を引き合いに出し、イギリスでは中国民衆法廷が重要な役割を果たし、広まるようになった。・・・アメリカはコロナに関わる状況で中国への不信が深まり、これがきっかけで、国会で臓器収奪問題に関する法案が可決されるなどして、広まるようになった、では日本ではどうやれば広まるか?などとして、助言をしていただきました。



 長尾氏は、日本政府は中国の臓器収奪問題を知っていて、敢えて動こうとしていないから、問題だ と述べられていました。

※長尾たかし前衆議院議員に、早速FBに早速勉強会の事について掲載いただきました。ありがとうございます。

 

長尾たかし 前衆議院議員のFBより
 

 

【前衆議院議員 長尾たかし公式チャンネル】
中国臓器移植問題とColabo問題 共通のビジネスモデル

 日本の医療機器が臓器収奪に使われている?!

※イーサンガットマン氏の勉強会に来ていただきました前衆議院議員 長尾たかし氏が日本の医療機器メーカーと臓器収奪問題について、お話しされています。

https://www.youtube.com/watch?v=T43a2TkOeXU

 

【エポックTV】調査記者が暴く臓器強制摘出のおぞましい実態 中国で20年以上続く史上最悪の人権弾圧が発端と指摘 【時代の選択】

https://www.epochtimes.jp/2023/04/144075.html